海底熟成酒ならぬ、海底熟成酢

一昨年前に東京で開催したイベントで仲良くなった、海底熟成酒を企画している友人から、昨年、非常に面白い提案がありました。

「海底熟成酒、今年もやるんですけど、お酢沈めてみないっすか?」

一昨年前に東京で開催したイベントについては、このブログからどうぞ↓↓

http://moneybooksystem.blogspot.com/2018/11/blog-post_25.html

海底熟成酒とは、蝋で封をしたお酒を、温度が一定である海底に一定期間沈めることによって、熟成度が増し、味がまろやかになる、旨みが増す、という効果が期待されており、お酒のリブランディングにも貢献できる企画のことです。

友人の石田くんは、様々な酒蔵さんのお酒を対馬などの海に沈め、同じ日に製造された同じ酒との比較をしながらの飲み会「海底熟成酒を楽しむ会」などを定期的に開催しています。

わたしはイベントの際、酒やビール、ワインなどのお酒の海底熟成前と後の飲み比べをしましたが、本当に違う!別物⁉︎と言いたくなるほど違います。

海底熟成後のお酒は、角が取れて丸みがある味、とげとげしいところがなく、すーっと喉に入っていくような美味しさに変わっています(熟成前のお酒ももちろん美味しいです!)

海底熟成によって、味が変わるメカニズムは、はっきりとわかっている、とは言えませんが、一定の海温で保管されることと、波の揺れ、つまり波動がお酒という液体になんらかの影響を与えているのではないか、という考えを、石田くんから聞きました。

そこで、わたしも、川添酢造のお酢を沈めてみたいなぁ、と思っていたところ、企画があったので、玄米酢を沈めてみました。

場所は対馬の海、期間は3ヶ月。

蝋でしっかり蓋をされて波に揺られて戻ってきた玄米酢が、こちら。

左が海底熟成の玄米酢。右は同じ日に作った玄米酢。

海底熟成酢は、フジツボやカメノテなどの貝類がくっるいていたので、それは剥がしてもらっています。

川添酢造のみんなで、飲み比べをしました。

見た目は全く区別つきません。色の変化などは見られませんでした。

香りは、もうすでに違います。海底熟成酢は、ツンツンした香りはあまりせず、熟成したお酒のような香りがしていました。

味は、はっきりとした違いが感じられました。誰が飲んでもわかる違いです。沈めていない玄米酢は、どっしりとした旨みと広がる酸味が特徴ですが、海底に沈めたものは、フルーティな飲み口と旨みが丸く若干甘みを感じるほどでした。

お酢らしさ、と言えば玄米酢のどっしりとした旨みですが、熟成酢のほうは、角がない丸い旨み、という特徴の違いが出ました。

非常に面白い変化でした。

このことで思い出したのが、以前、お客様が、川添酢造に10年ものの玄米酢を持ってきてくださった話です。お客様が、川添酢造で10年前に一升瓶で買った玄米酢をそのまま長く置いておいて、まだ飲めるかな、と味を見てみたら、すごく美味しかった!味を見てみて欲しくて、持ってきた!と持ち込んでくださったのです。

味をみてみると、本当に旨い。熟成が進んで味が丸くなって、本当に美味しかった、とお酢の醸造担当の弟と父が言っていました。

今回の海底熟成酢を飲んでみて、10年ものの酢を思い出した、と2人が言っていました。

海底熟成をさせる効果は、長い期間、適性に保管しないとできない長期熟成の味が、数ヶ月で叶うかもしれない、という仮説が生まれました。

いまのところ、海底熟成酢としての商品化は考えていませんが、長期熟成させたお酢が、フレッシュなお酢とは違う良さがあることがわかったので、今後、いいバランスのお酢をさらに目指していこう、という目標ができました。

海底熟成酢の提案をしてくれた石田博貴くん、

繋げてくれた対馬のサステイナブルな漁業に取り組む友人、銭本慧くんに、感謝を込めて。